日本語 English
HIGASHI Daisaku (東 大作 上智大学教授)

2026年06月30日:イラン戦争 米国とイラン「覚書」の歴史的意義と今後の課題

「中東を一変させる」可能性を秘めた覚書合意

2026年6月18日、米国とイランは、4月7日に停戦してから約2か月以上の交渉を経て、遂に覚書の内容に合意し、双方が調印するに至った。米国はトランプ大統領がサインを行い、イラン側は、ペゼシュキア‌ン大統領‌がサインする場を動画で配信した。

この覚書の骨子は、1)ホルムズ海峡の封鎖を、イランと米国の双方が解除する。2)その後、イランの核問題と、(イランが核兵器開発を行わない見返りとして)米国などの制裁を解除する協議を、6月18日以降、60日間で行う、という内容である。その間は軍事行動を控え、60日間で合意に達さない場合には、延長も可能という内容になっている。

私は、2026年4月21日に放送された生番組、NHKBS1の「国際報道」に出演した際、「まずは米国とイランの双方がホルムズ海峡を開放し、自由に石油などが通るようにすれば、米国はガソリン価格が下がり、イランも石油を輸出できるようになり双方メリットがある。同時開放した後に、核問題とイランへの制裁解除の問題を60日間くらいかけて話し合い合意していくのが、この戦争を終結させていく道だと思う」と話していた。その意味では、米国とイラン双方が、2段階方式をとることで合意したのは、合理的な判断だったと考えている。

また覚書を交わす最終局面では、米国とイランの和平協議の主な仲介者を務めるパキスタンに加え、和平調停を国是として水面下で双方に接触していたカタールも、交渉チームをイランの首都テヘランに送り込み、最終的な覚書の文面調整に向け支援を行い、合意に至った。6月21日にスイスで始まった米国とイランの覚書締結後、最初の協議の仲介をパキスタンと共にカタールが行ったのは、上のようなカタールの役割が背景にある。(カタールの和平調停への熱意については、3月19日のブログ参照)

歴史的内容が盛り込まれた覚書

その私でも、実際の覚書の内容を読んだときには驚愕した。(14項目の覚書の全文は、こちらで読める。CNN6月18日ウエブ記事より)。

私が驚いた理由は、今後の米国とイランの核協議で合意に至れば、これまでの中東の政治状況を一変させる内容の覚書だったからである。一言でいえば、1979年に起きたイラン革命以来の、米国とイランの敵対関係が、終結する可能性を秘めた、その意味で相当踏み込んだ、かつ大胆な覚書となっている。

つまり、イランが、一貫して主張してきた「核兵器を作る気はない」という約束さえ保障されれば、これまで米国がイランに科してきた全ての制裁を解除し、イランは世界第三位と推定される膨大な埋蔵量を誇る石油を自由に世界中に輸出できるようになる。かつ世界中で凍結されているイランの約10兆円とも16兆円とも言われる海外資産も解除され、イランに返還されることが、この覚書に明記されているのだ。

上はあくまで、米国とイランが今後の協議で、合意に達した場合にイランが得られる利益である。ただ今回の覚書はそれだけでない。今回の覚書を交わした後、即座に、米国はイランの石油輸出に対する制裁を一時停止すると覚書に明記した。つまり、イランは、直ちに世界中に、米国の制裁なしに石油を輸出できるようになった。(2018年にトランプ1次政権がイラン核合意から離脱し、イランにすさまじい制裁をかけた後、イランは石油の輸出が極端に難しくなり、その殆どを中国にのみ輸出していた。)

またイランが被った被害を回復するために、(米国は拠出しないとするものの)48兆円規模の国際復興基金を設置し、アラブ諸国などから資金を集め、イランの復興を支援することまで盛り込まれたのである。

覚書が発効してすぐに、イランは石油を全世界に輸出できることになる。その上で、「核兵器を作らない」ことを検証する方法について合意さえできれば、イランをずっと苦しめてきた経済制裁から解放され、さらに海外で凍結されてきた資産まで戻ってきて、かつ復興基金からの支援も得ることができる覚書なのである。

覚書を交わした後、6月21日にスイスで、バンス米副大統領が率いる米国交渉団と、ガリバフ国会議⻑とアラグチ外相が率いるイランの交渉団との最初の協議が行われた。長時間の協議が終わった後、バンス副大統領は、「とても建設的な協議ができ、最終的な和平合意に向けて、非常によい土台(Foundations)ができた」と語った。

トランプ政権内で、イランに対する軍事攻撃に最も批判的だったと言われるバンス副大統領は、6月18日に覚書が締結される前後、何度も記者団に対して「これは、中東の状況を根底から変革させる(Transformativeな)可能性を秘めた合意だ」と何度も強調している。私も正直そう思う。

覚書に入らなかった「ミサイル問題」と「抵抗組織への支援」

今回の合意(覚書)で、もう一つ画期的なのは、これまでトランプ政権や米国の共和党が、オバマ大統領による2015年イラン核合意について批判する大きな理由となっていた、「イランの弾道ミサイル問題」と、イランによる「ヒズボラやホーシー派など、軍事組織への支援の問題」が、全く触れられなかったことである。

このイランの弾道ミサイル問題については、覚書が明らかになった後の記者に対する質問に対しトランプ大統領は、「うーん、でもサウジアラビアもカタールなど周辺諸国もみな弾道ミサイルを持っているのに、イランだけ持つなとはなかなか言えないでしょう」と答えた。実際そうなのである。私もこの件は、もともと無理筋で、2015年のオバマ米大統領による「イラン核合意」を非難するための論理だと考えている。中東諸国がみな持っているミサイルに関し、「イランだけは制限しろ」というのは、なかなか理屈が通らず、イランを説得させるのも難しい現実がある。

また今回、イランが支援する組織に対する支援問題も全く覚書では触れられなかった。実際、サウジアラビアも、イエメン内戦において、イエメン政府側を軍事的にも財政的にも支援し、一時は軍事介入も実施した(拙著「内戦と和平」(中公新書)参照)。アラブ首長国連邦(UAE)も、イエメン南部の独立派を支援しているし、スーダンの民兵組織RSF (Rapid Support Force) をUAEが支援していると、(UAEは否定しているものの)多くの専門家が指摘している。(拙論「スーダン紛争の要因と日本の役割」、『アジア時報』)参照)。つまり周辺諸国も、一定の外部勢力を軍事的・財政的支援をしている中、「イランだけはしてはいけない」というのは、かなり無理がある。

それもあって、私が2026年2月にカタールで懇談した、カタール外務副大臣のクライフィ氏は、この「ミサイル問題と支援組織の問題は、核問題と切り離すべきだ」とはっきりと主張していた。クライフィ氏は、イスラエルとハマスの交渉の陣頭指揮をとり、米国とイランの水面下の和平調停も行っているカタールの和平調停の鍵を握る人物だ。彼は2月8日の私との面会で、「イランの核兵器開発を止めることやその査察と引き換えに制裁を解除する協議と、米国がそれ以外に求めているイランのミサイル開発の制限や、イランが支援する組織の問題は分けて議論すべきであり、そのように米国も説得している」と強調していた(拙論「中東における日本外交の貢献とは」、雑誌『外交』2026年5月号参照)。

そして実際、最終的に米国とイランで合意した覚書では、ミサイルや、イランの支援組織への対応については、何も入らず、とにかく「イランが核兵器の開発を行わない」保障さえ担保できれば、イランに対する全ての経済制裁を解除し、海外に凍結されている資産を全て返還すると覚書では明記されているのである。

まさにその意味では、この核協議が成立し、米国とイランで合意に至れば、中東全体に革命的な地殻変動を与える可能性を秘めた覚書であることは間違いない。

覚書の実施と和平合意に向けた今後の課題

しかしこれだけの変化を生む可能性がある和平協議が、簡単に合意できるとは考えられず、様々な障害があることは容易に予想される。私自身は、今後の交渉の課題として、主に三つがあると考えている。

課題1:ホルムズ海峡を巡る管理

6月27日以降、米国は「イランがホルムズ海峡を通るタンカーに攻撃をしたため、イラン本土を攻撃した」と主張、イランは「米国に攻撃されたので、バーレーンやクウエートの米軍基地を攻撃した」と主張し、双方、覚書への違反行為だと批判した。しかし6月29日に双方は、停戦で再び合意。「6月30日にカタールの仲介で、ドーハでこのホルムズ海峡の管理問題について話し合う予定となった」とトランプ大統領は自身のソーシャルメディアに投稿した。一方、イラン側はそれを否定しており、この稿を書く瞬間も、ギリギリの攻防が続いている。

このホルムズ海峡の管理について、覚書の第五条には、次のような条文がある。

5.この覚書が調印された後、イランは、最初の60日間については、一切の交通料を徴収せず、ホルムズ海峡を通る民間船舶の安全な航行のために、最善を尽くす。すぐに民間船舶の通行は始めるが、最初の30日間、イランはホルムズ海峡の技術的また軍事的障害を取り除くための努力をする。またイランは、(対岸の)オマーンと、将来のホルムズ海峡の管理について、他の湾岸諸国と共に協議するが、その際は、関係する国際法に沿い、ホルムズ海峡の関係国の主権も尊重していく。

非常に分かりにくい文章だが、簡略すれば、「最初の60日間は、交通使用料は取らないとイランは確約する。その後については、イランが、オマーンや他の湾岸諸国とも議論しながら、国際法に則り、ホルムズ海峡の管理について決めていく」という内容である。

これを見て、60日間の協議の後は、イランは、オマーンと共に、交通料を科すのではないかという見方が、米国などでは根強くある。しかし少なくとも覚書ではそう書いておらず、「オマーンと協議する」となっており、しかも国際法に沿って、という文言がある。国際法に則れば、こうした海峡の通過に関して料金は発生しないというのが世界的な慣習である。湾岸諸国も新たな交通料をイランが科すことについては、当然ながら猛反発している。また長期的にはそんなことをすれば、ホルムズ海峡を回避した石油やガスの輸出経路を作る動きが、より活発化することも目に見えている。

その意味では、イランが実際に交通料を取ることを狙っているのか、それともあくまで米国との今後の核協議におけるレバレッジ(交渉材料)としてこれを維持しているかは、まだ分からない。私は比較的後者の可能性が高いと見ている。なぜなら、この稿で繰り返し述べているよう、核協議で合意ができれば、イランにとっての経済的なメリットは、(国際的に孤立する可能性がある)ホルムズ海峡の船舶から交通料を取るよりも、はるかに大きいからだ。

現在、イランはホルムズ海峡を通る船舶に対して、イランに近い海域を通るよう要請し、事前に登録もするよう要請していると報じられている。今回、米国が、あえてオマーンに近い海域でタンカーを通そうとし、それに対し、ホルムズ海峡を巡る交渉力を維持したいイラン側が反発して、攻撃に出た可能性は十分ある。

ただこのことは、米国とイランの双方が全面的な戦争に戻りたくないと考えていることから、乗り越えることはできる課題だと思う。カタールが仲介するドーハでの交渉などで、このホルムズ海峡の安定的な管理について、米国とイランが合意できるかが、今後の和平協議の行方を占う一つの鍵になる。

課題2:イスラエルとヒズボラ(レバノン)の戦闘

覚書の第一条には、「米国とイラン、そして現在戦争下にある同盟者は、このMoUにサインして、レバノンを含めた全ての戦線における軍事行動を即時、かつ永久に停止する。」という趣旨の文言が明記されている。つまりイラン側の強い要求を受けて、イスラエルと(レバノンを拠点とする)ヒズボラの停戦もこの合意の中に入っている。

しかし、前回の3月17日のブログでも解説したように、イスラエルのネタニヤフ政権は、この米国とイランの核合意に真っ向から反対しており、それを阻止したいという動機は強く存在する。またイスラエルは今年10月末までに総選挙をしなければならない。ネタニヤフ首相主導で、米国も誘い込みイラン戦争を開始したが、「イランの政権転覆」などは全く起きず、逆にイスラエル抜きに、米国とイランで、大幅に米国が譲歩したとも言える覚書が結ばれたことで、イスラエル国内でのネタニヤフ氏の支持は、大きく下落している。ある世論調査では、ネタニヤフ氏を首相として支持する人は、3月上旬の40.5%から29.4%と、大幅に下がっていると報じられている。

ただ、ネタニヤフ首相は、既に三つの汚職の容疑で起訴されており、選挙の後、もし野党に転落すれば、逮捕されるリスクさえある。その意味では、ネタニヤフ首相としては、なんとか戦闘を続けることで、支持を維持したいという思いは強いと推察される。他方、イランは、支援を続けてきたヒズボラを守るため、「レバノンも含めた軍事行動の停止」を米国に強く求めている。具体的には、米国からイスラエルに圧力をかけ、レバノンでの軍事行動を停止させるよう求めている。これを受け、米国の仲介でイスラエルとレバノン政府で何度か停戦合意しているが、そのたびにすぐ破られる状況が続いている。  

レバノン政府とイスラエル政府が停戦合意しても、実際の戦闘は、(レバノン政府ではなく)ヒズボラとイスラエル政府の間で行われている現実もある。2024年の停戦合意の時のように、ヒズボラも含めた停戦まで米国が持っていけるかが、もう一つの焦点だ。またイラン側も最後は、今回の覚書に基づいて米国と合意するメリットが非常に大きいため、ある程度、この問題については妥協する可能性もあると私は考えている。つまりレバノンで散発的な戦闘が続いても、イランが米国との合意に応じるという選択肢も最後はあり得る。実際、まだレバノンでの戦闘が断続的に続いている中で、上の覚書は交わされたのである。

課題3:核を巡る協議(高濃縮ウランの扱いと今後のウラン濃縮)

この三つ目の課題が、米国とイランの核協議の最大の焦点になる。2015年の米国とイランの核合意では、核不拡散体制(NPT体制)で各国に認められている、3.67%のウラン濃縮まではイランに認め、国際原子力機関(IAEA)が、イランがそれ以上のウラン濃縮をしないことを厳しく査察するというのがイラン側の義務であった。それをイランが順守すれば、「米国は徐々に経済制裁を解除する」ことが2015年核合意の骨子である。

これに対してトランプ大統領や共和党は、「イランのミサイル開発を認めている。またイランの支援組織への制限もない」と猛反対し、2017年に核合意の履行を停止した。それでもイランは、上の3.67%は守っていたが、2018年にトランプ政権がイラン核合意から正式に離脱し、猛烈なイランへの経済制裁を始めた。これに対抗して、イランは、徐々に濃縮ウランの濃度を上げ、IAEAの推定では現在、約60%の濃縮ウランを400キロ程度、維持しているとされている。

そのため、今後の米国とイランの核協議では二つのことが焦点になる。一つは、この400キロ程度の高濃縮ウランをどうするかであり、もう一つは、今後のイランのウラン濃縮を、どの程度認めるかである

400キロの高濃縮ウランについては、覚書の8に、「IAEAの査察の下で、イラン国内で希釈される」と明記された。覚書を交わす前は、トランプ大統領は「高濃縮ウランは必ずイラン国外に持ち出す」と繰り返し主張していたが、最終的にこの点は、IAEAが査察すれば、イラン国内で希釈すればよいという結論になった。

最後に残るのが、イランの今後のウラン濃縮である。本来であれば、NPT体制で核兵器を持たない国にも認められている3.67%のウラン濃縮を認め、それをIAEAが厳しく査察するというのが、(オバマの2015年核合意と同様)、イランにとって受け入れやすい内容であろう。

他方そうなると、「トランプ政権の核合意も、オバマ政権の核合意と全く変わらない」という批判に、トランプ大統領は晒されることになる。

その意味では、5年なのか、7年なのか、10年なのか分からないが、米国とイランが折り合える年数の間は、「イランが一切ウラン濃縮をしない」と確約するのが、最終的な落としどころになる可能性はある。要は、トランプ大統領が、「オバマの核合意よりずっと素晴らしい合意だ」と国内的にアピールできればよいのである。実際トランプ大統領は、「20年間、イランがウラン濃縮をしないと約束すれば、それで十分だ」と発言している。

イラン政府としては、「なぜNPT体制に入っている他の国は、3.67%までのウラン濃縮は認められているのに、我々はダメなのか」という忸怩たる思いはあるだろう。ただ今回、トランプ政権と合意できれば、その見返りは極めて大きい。またオバマの核合意を基本的に支持した民主党としては、この合意に根本的に反対することは難しい。その意味では、イランにとっては千載一遇のチャンスでもある。5年から10年程度の停止で、米国との合意を勝ち取り、全ての対イラン制裁を解除させ、米国との敵対関係に終止符を打てるとすれば、それはイランにとって計り知れない大きな価値がある。

今後の日本の役割

この歴史的局面における日本の役割は何か。日本は、米国ともよい関係を維持し、またイランとの間でも、西側諸国の中では、最もよい関係を維持している。イランの交渉チームの鍵を握るイランのアラグチ外相は、2009年から2011年末まで、在日イラン大使として、多くの日本人や政治指導者と交流を持ち、東日本大震災の直後も、被災地に食料品など人道支援物資を自ら運ぶことを続けるなど、日本への特別な好意を持つ人物として知られている。

2月28日に、米国とイスラエルがイラン攻撃を開始してから、既に、アラグチ外相は、茂木外務大臣と7回以上、電話会談を行っていると言われており、アラグチ外相からの依頼も多数あると報じられている。それだけ日本に対し、イランと米国の間を取り持って欲しいという期待もあるはずだ。

今回の戦争は、米国・イスラエルが一方的にイランに対して始めたものである。その意味では、第二次世界大戦以後、世界的に培われてきた基本的な国際ルール、つまり「国家主権、国境線、民族自決という理念の尊重」を米国は、イスラエルと共に一方的に破ったことは間違いない。

しかし、これまで拙著やブログ、論文、5月18日に出版した3冊目の英語の単著「分断の時代における和平調停と平和構築(Mediation and Peacebuilding in an Age of Division)( Routledge 2026)」でも強調しているように、上のような基本的な国際ルールを破った軍事侵攻や軍事介入は、フランスのインドシナ戦争やアルジェリア戦争、米国のベトナム戦争、ソ連のアフガン侵攻、そして米国のタリバンに対する軍事介入やイラク侵攻など、全て失敗し、大国が撤退して終わっている歴史的事実がある。

その意味で、今回トランプ大統領が、イランへの攻撃を始めたものの、イランの政権転覆などはできないことを、実際の行動から悟り、ホルムズ海峡に隣接するイランの地政学的有利さも肌身で理解した経験を経て、今回の覚書がある。その第二条には、以下のような文言が明記されている。

「米国とイランは、双方の主権と領土の一体性を尊重し、双方の内政に干渉しないことを約束する」。つまり上の基本的な国際ルールを守ることを双方が合意したことで、初めて締結されたのがこの覚書なのである。

この歴史的意義の大きさを、日本はイランと米国の双方、特に交渉の鍵を握るアラグチ・イラン外相やバンス米副大統領に対し、あらゆるルートを通じて、核合意をまとめ、中東に新たな平和と安定を築くきっかけにするよう、全力で働きかける時期だと思う。石油の95%を中東に依存する日本にとって、中東の平和や安定は死活的に重要である。そして今、日本政府がアラグチ外相と太いパイプと信頼関係があることも活かし、日本が平和国家として歩んできた生き方に自信を持って、長年の敵対関係に終止符を打ち、新たな関係を築くことこそが、イランにとっても米国にとっても国益を最大化する決断だと伝え続けることはできるはずだ。それは、第二次世界大戦の惨禍を経て、敵対国だった米国と友好な関係を築くことで80年以上もの平和を享受し、一定の繁栄を実現している日本だからこそできる説得だと私は考えている。それは「命と尊厳を守る」という、日本が掲げる「人間の安全保障」の理念を、具体的に中東の場で実現する道でもあると私は考えている。

(了)

参考資料

CNN2026年6月18日のウエブ記事(無料)より、覚書の全文を、英語のまま以下に掲載。

The United States of America and the Islamic Republic of Iran have jointly agreed in good faith on the following:

1 — The United States of America and the Islamic Republic of Iran and their allies in the current war are signing this MOU to declare the immediate and permanent termination of military operations on all fronts, including in Lebanon, and undertake from now on not to initiate any war or any military operation against each other, and to refrain from the threat or use of force against each other, and ensuring the territorial integrity and sovereignty of Lebanon. The final deal will confirm the permanent termination of the war on all fronts, including in Lebanon and other provisions of this paragraph.

2 — The United States of America and the Islamic Republic of Iran undertake to respect each other’s sovereignty and territorial integrity and to refrain from interfering in each other’s internal affairs.

3 — The United States of America and the Islamic Republic of Iran commit to negotiating and achieving the final deal in maximum 60 days, extendable with mutual consent.

4 — Immediately upon the signing of this MOU, the United States of America will begin the removal of its naval blockade and any disturbances or impediments against the Islamic Republic of Iran, and will fully end the naval blockade within 30 days. During this period, the traffic of vessels will be in proportion to the numbers of pre-war traffic being restored by the Islamic Republic of Iran. The United States of America further undertakes to remove its forces from the proximity of the Islamic Republic of Iran within 30 days after the final deal.

5 — Upon the signing of this MOU, the Islamic Republic of Iran will make arrangements using its best efforts for the safe passage of commercial vessels with no charge, for 60 days only, from the Persian Gulf to the Sea of Oman and vice versa. The traffic of commercial vessels will immediately start, and considering the need for removing the technical and military obstacles, and demining by the Islamic Republic of Iran will be instated within 30 days. The Islamic Republic of Iran will conduct dialog with the Sultanate of Oman to define the future administration and maritime services in the Strait of Hormuz in discussion with other Persian Gulf littoral states in line with the applicable international law and the sovereign rights of coastal states of the Strait of Hormuz.

6 — The United States of America undertakes with regional partners to develop a definitive, mutually agreed plan with at least USD 300 billion for the reconstruction and economic development of the Islamic Republic of Iran. The mechanism for the implementation of this plan will be finalized as part of a final deal within 60 days. All required licenses, waivers and permissions needed for the relevant financial transactions will be granted by the United States of America.

7 — The United States of America undertakes to terminate all types of sanctions against the Islamic Republic of Iran, including the United Nations Security Council resolutions, IAEA Board of Governors resolutions, and all unilateral US sanctions, primary and secondary, in an agreed upon schedule as part of the final deal. The Islamic Republic of Iran and the United States of America acknowledge the critical importance of the sanctions termination issue above mentioned, and expressed their intentions to immediately address these issues in the negotiations in order to achieve mutual agreement on them.

8 — The Islamic Republic of Iran reaffirms that it shall not procure or develop nuclear weapons. The United States of America and the Islamic Republic of Iran have agreed to resolve the disposition of stockpiled enriched material pursuant to a mechanism that will be mutually agreed upon in accordance with the schedule mentioned in paragraph seven, with the minimum methodology to be down blended on site under the supervision of the IAEA. The two parties also agreed to discuss the issue of enrichment and other mutually agreed matters related to the Islamic Republic of Iran’s nuclear needs, based on a satisfactory framework being agreed upon in the final deal. The final deal will confirm the provisions of this paragraph. The United States of America and the Islamic Republic of Iran acknowledge the critical importance of the nuclear issues above mentioned. They express their intention to immediately address these issues in the negotiations in order to achieve mutual agreement on them.

9 — Pending the final deal, the United States of America and the Islamic Republic of Iran agree to maintain the status quo. The Islamic Republic of Iran will maintain the current status quo of its nuclear program, and the United States of America will not impose any new sanctions and will not deploy additional forces in the region.

10 — The United States of America undertakes that immediately upon the signing of this MOU and until the termination of sanctions, US Department of Treasury will issue waivers for the export of Iranian crude oil, petroleum products and derivatives, and all associated services, including banking transactions, insurances, transportation, etc.

11 — The United States of America undertakes to make fully available for use the frozen or restricted funds and assets of the Islamic Republic of Iran upon the implementation of this MOU. The United States of America and the Islamic Republic of Iran will mutually agree on the procedures related to the release of these funds during negotiations. Such funds, whether retained in the original account or transferred, shall be made fully usable for payment to any ultimate beneficiary designated by the Central Bank of the Islamic Republic of Iran. The United States of America undertakes to issue all necessary licenses and authorizations accordingly.

12 — The United States of America and the Islamic Republic of Iran agree that an executive mechanism will be established to monitor the successful implementation of this MOU and the future compliance of the final deal.

13 — After signing this MOU, and subject to the beginning of the implementation of paragraphs 1, 4, 5, 10 and 11 of this MOU, and the continuing implementation of these measures, the United States of America and the Islamic Republic of Iran will start negotiations regarding the final deal exclusively on the other paragraphs.

14 — The final deal will be endorsed by a binding UNSC resolution.